河童の裏庭

雑多な感じ

田舎で語られる、雪に関する言い伝えの話

 

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僕の地元には「山に3回雪が積もると、雪が人里に降りてくる」という言い伝えがある。
自然豊かな田舎に根付くこの言い伝えは、言葉通り、遠く聳える山に3度雪が積もれば、里にも雪が降り始める...という意味だ。僕はこの伝聞が何故だか異様に好きで、冬になるたびこの言葉が頭をよぎる。

 

 

 

ーー勿論、この言い伝えには何の科学的根拠もない。山に1度だけ雪が積もったと思ったら、次の日には町にも雪がしんしんと降っている...なんてこともザラで、冷静に観測してみるとてんで当てにならない言い伝えだ。テレビの天気予報でも見た方が、よっぽど明確に降雪の有無を知ることができるだろう。

 

にも関わらず、僕の町では「山に3回雪が降ると、人里にも雪が降る」という言い伝えが、まことしやかに語られている。両親や祖父母も、学校の先生も、近所のおっちゃんおばちゃんも、大人も子供もおねーさんも、冬になると皆こぞってこの言い伝えを口にし、遠く聳える山々を観測し始める。
「あの山の白いのは1回目やろか」
「こないだも積もってたから2回目やないか?」
「そいじゃそろそろかねえ?」
といった具合で積雪へのカウントダウンが始まり、天気予報など全く意に介さず、町全体がこの言い伝えを持ち上げ、嘯きだすのだ。


無論僕も例外ではなく、この言い伝えを盲信していた1人だ。小さい頃、寒い冬の朝、雪が降るのを待ち遠しく思いながら、毎朝遠くの山々を見上げていたのが懐かしい。

 

ーー雪の中で遊ぶことは、子どもの頃の僕には凄く刺激的なことだった。そりに雪合戦に雪山探検、あらゆる遊びがいつもとは違う、非日常に彩られたもので、雪が降るたびにワクワクし、心が躍った。

そんな雪への憧憬を、白くなりつつある山を見上げることで、町全体で共有していた。「山に3回雪が降ると、人里にも雪が降りてくる」という根も葉もない言い伝えを信じて、「そろそろ里にも雪が降るんじゃないか」と町全体がそわそわしだす、あの独特な空気感が堪らなく好きだった。

 

 

 

ーー天気予報も何もない時代、山の状態から天候を読み取り、生活に役立てていた先人達の知恵が言い伝えとなって、正確無比な天気予報が存在する今尚、連綿と語り継がれ、定着しているのだ。
「雪がいつ降るかなんて天気予報見たらすぐ分かるじゃん」などという無粋な突っ込みはどうか控えてもらいたい。

まだかまだかと雪に想いを馳せながら、毎朝部屋の窓から山を見上げるあのワクワク感は、どうにも言葉では上手く書き表せないが、僕の中では確かに、冬の風物詩として今なお息づいているのだ。